SOMETHINN vol.29にゲスト出演するIttiに、エクスペリメンタル系ディープ・ドラムンベースとは何かを聞いてみた

聞き手、編集: DJ Fulltono


4年くらい前だろうか。ちょうど僕がジューク/フットワークのスタイルをよりミニマルにしたトラックを作ったりDJで表現したりし出した頃に、大阪でドラムンベースに特化したレコード屋Grind Recordsのユタカさんから「最近ミニマルなドラムンベースが面白い」と教えてもらい、以降も、東京のDXさん、関西では101さん、BIG TED、KESHIGOMUといったドラムンベース界隈の人達からも、フットワークを取り入れたドラムンが出てきているという話を伺ったりしてるうちに、少しずつドラムンベースに興味が沸いていたが、その全貌が見えないままだった。

そして2018年後半に、dBridgeのアルバムを聴いたあたりから、こんなドープな曲がヨーロッパのシーンでどう機能しているのかということが気になり始め、掘り始めると、以前からドラムンのDJの人達からちょくちょく噂を聞いていた音楽らしきものに行き当たった。そして今年に入って、ひょんなことからItti氏のEPを偶然聴くことになるのだが、こんな音を作ってる人が日本にいるのか!と驚かされ、これまでのドラムンベースの概念を覆された。ジュークとドラムンベースはこれまで交わることはあったものの、音自体の親和性については謎だった。しかし前回のSOMETHINNでのDanny ScrillaのDJに感動し、これはもしかすると、新たな親和性が生まれるのではないかと思い今回のパーティーでIttiを即オファー。新たな音楽に触れるパーティーになるかもしれない。


ドラムンベースと言えども、テクノ(曲の構成)、ダブステップ(低音処理)、アンビエント(空間)など、他ジャンルの要素を持ち合わせている点が面白い


Fulltono: 2月にblock.fmに掲載されたインタビューも読み、Ittiさんのお奨め曲もひと通り聴きました。UKを中心としたエクスペリメンタルでディープなドラムンベースシーンとはどのように生まれてきたのですか?僕が知っているEXIT Records等のハーフステップとはちょっと質感が違うようにも思えるし、ダブステップに近いようにも感じたのですが。

Itti: エクスペリメンタルでディープなドラムンベースシーンはSamurai Music・Cylon Recordings・CX DIGITALが長年シーンを牽引しています。最近では若いレーベルも多く、 uvb-76 Music・Weaponry・Eternia Music・Din is noise records などが頭角を現している印象です。

実際、エクスペリメンタルでディープなドラムンベースとExit Recordsの様なハーフステップの距離はとても近く、Exit RecordsのオーナーdBridgeはCylon Recordingsからリリースし、またSamurai Music・Cylon RecordingsのコアアーティストであるLoxy・Ruffhouse・Clarity・ASCはExit Recordsからもリリースしていたりします。

ドラムンベースと言えども、テクノ(曲の構成)、ダブステップ(低音処理)、アンビエント(空間)など、他ジャンルの要素を持ち合わせている点が面白いと思っています。レーベル単位で見てもジャンルを超えてエクスペリメンタルでディープなテクノやダブステップをリリースしているレーベルがいくつかあり、Blackest Ever Black・Osiris Music・The Stone Tapesなどはオススメです。

Fulltono: なるほど、一通り聴きましたが、ジャングルだったりハーフステップだったりビートは様々ですが、どれもディープなテーストですね。こういう系風がシーンとして存在することは理解できました。

ちなみに、国によって作風等の特色などはありますか。

Itti: 国によって比較できるほど各国にアーティストがいるわけではないのが現実です。。。しかし、冒頭に挙げたuvb-76 Music (イギリス/カナダ)・Weaponry(アメリカ)・Eternia Music(リトアニア)・Din is noise records.(レバノン)から分かる様に、世界中にその音は現在進行形で広まっていると強く感じています。去年の12月にはイギリスに行きプレイしましたが、各国からアーティストが集結し、コミュニティの熱量が高かったことが印象的です。SNSを通じてコミュニケーションが取りやすくなったこともあり、帰国後はコラボの話やリリースの話をいただくことが増え、今はできることをひたすらやり、多くの人にこの音を知ってほしいという思いが強いです。


ループをループと感じさせないようにすることにはかなり意識して作曲をしています


Fulltono: 次にご自身の曲について伺いたいのですが、僕が好きだと感じた部分は、ビートの音のバランスの素晴らしさでした。キック、ハイハット、その他の音が、置かれるべきところに最小限に置かれていて、それが微妙に抜き差しで展開が付けられ、ループをループと感じさせない細かい配慮がなされていました。このことは、僕自身がトラックを作るときに最も気を配っている部分でもあるため、特に印象に残りました。

これらのトラックをどのようにしてプレイするのですか?非常に興味があります。

Itti: 曲を聞いてくださり嬉しいです、ありがとうございます!おっしゃる通り、ループをループと感じさせないようにすることにはかなり意識して作曲をしています。少ない音を常に微妙に変化させ続け、リスナーの方が複数の視点からグルーヴを感じられる様なトラック作りを心掛け、試行錯誤しています。

また、同時に意識していることは、自分の良いと思った感覚で音を選ぶことです。実は今まで楽器はほとんどやったことがなく、音楽理論の知識(コードやスケールなど)がありません。その代わり、集中して音としっかり向き合うことを意識しています。

Fulltono: なるほど!EPに入っているどの曲も、一貫してディープなスタイルですが、これは、自分のDJプレイの一部分(パーツ)として捕らえているのですか?例えば僕でしたら、フロアのグルーヴをキープするツールとして自分のトラックを連発し、流れを変えたい時や、一気に盛り上げたい時は、シカゴのジューク・フットワークトラックをチョイスします。なので、シカゴみたいなトラックは十分DJする分には足りているから、足りないもの(世間に売っていないもの)を自分で作って補っているという考え方です。

Itti: 現在リリースしている曲のほとんどはDJプレイの一部分としては捉えておらず、自分のアーティストとしての方向性やスタイルを示すものです。(まだアーティストとしてのキャリアも浅いので、最初に示したいと考えました。)

ただ、リリースしていない曲はフロアを意識しているものが多く、他アーティストの曲と織り交ぜて使うことが多いです。

Fulltono: そうなんですね。5月4日のSOMETHINNでのプレイが益々楽しみになりました!

8月にはクロアチアのMembrain Festivalに出演されるとのことですが、そこでは自分の曲だけをプレイすると宣言されていますが、SOMETHINNでも同様ですか?ネタばれしない程度で結構なので気持ちを聞かせてください。

Itti: 実は、Membrain Festivalのフロアコンセプトが「未発表トラックだけでプレイ」と設定されているので現在制作に注力してます。

5月4日は最近作った中でも特に気に入っているものをセレクトしプレイする予定です。今からとても楽しみにしています。当日はよろしくおねがいします!

最後に自分からの質問ですが、Fulltonoさんはジュークのアーティストとして第一線で活動すると同時に、日本でジュークを広める活動も同時にしているという印象を受けました。これらの活動は似ている様で、全くの別物だと思っています。また、自分が作るエクスペリメンタルでディープなドラムンベースシーンは日本ではまだ浸透していないのが現実です。シーンを作ることのポイント、特に、アーティスト活動とシーン作りのバランスの取り方などの視点からご回答いただけると幸いです。

Fulltono: 確かにジャンル普及活動と個人の活動は全く別です。僕はジュークの中でもエクスペリメンタルなことを当初からやろうとしていました。しかし、そもそもジャンルのことを知っている人が日本にいなかったので、僕がやってることが実験的なのかどうか理解できる人がいるわけがありません。なので、まずはジュークという音楽を知ってもらう必要がありました。しかしながら(ここは声を大にして言いたい)結局、僕が普及活動としてできたことなどほとんどありませんでした。なのでシーンを作るアドバイスは残念ながら僕にはできません。僕ができたのは普及したいという意思を示すことだけでした。

Ittiさんが冒頭にエクスペリメンタル系ドラムンベースのジャンルについて、レーベルを列挙して簡潔に解説いただきましたが、僕が思うに、それだけでも普及の足掛かりになると思います。今後この文章が非常に重要な情報としてアーカイブ化されれば面白いですね。個人的に、エクスペリメンタルでディープなドラムンベースシーンは日本ではまだ浸透していないとお聞きし、逆にそそられている自分がいます。


PARTY INFO

= SOMETHINN vol.29 =

2019/05/04/SAT at CIRCUS TOKYO

DJ FulltonoとKeita Kawakamiがレジデントを務めるジューク/フットワーク・パーティー「SOMETHINN」。今回は中国・深圳を拠点にパーティー/レーベル〈UNCHAINED〉を主宰するDaniel Powerと、東京で活動するTomoyuki IchikawaのソロプロジェクトIttiを招いてお送りします。

Guest:
‪Daniel Power‬ (from China, Unchained)‬
‪ITTI‬ (Diffrent Music, Ronin Ordinance)‬‪Resident:

Resident:‪
DJ Fulltono‬ (Exit Records / Tekk DJz)
‪Keita Kawakami (Kool Switch Works)

‬1F Floor: 「short circit」×「DJR400」
AE35
BAXIM
D.J.G.O.
AKIOCAM

OPEN 23:00
ADV: 1,500yen+1d
DOOR: 2,000yen+1d

SOMETHINN

DJ Fulltono (Booty Tune) Pharakami Sanders (Kool Switch Works) YUMY

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